手術に関して

【緑内障手術】視野を守るために!手術の種類・費用・流れ・術後の注意点を徹底解説

緑内障手術は、「視力を取り戻す」ためのものではなく、「眼圧を下げて、視野が狭くなるのをゆっくりにする」ために行われる手術です。緑内障は進行性の病気で、放置すると視野がどんどん狭くなり、最終的には失明することもあります。

本記事では、緑内障手術の概要から費用、手術の流れ、術後の注意点まで詳しく解説します。手術を検討されている方やご家族のサポートをされている方にとって、役立つ情報をお届けします。ぜひ最後までご覧ください。

1.緑内障手術について

緑内障手術の概要:

眼圧が高い状態を下げるための手術であり、その方にとって安全と考えられる範囲まで眼圧(目のかたさ)を低くすることです。点眼で眼圧が下がらず、緑内障の進行が見られる場合に手術を検討する必要があります。

緑内障手術の必要性:

失明を防ぐためです。失われた視野は回復することはありませんが、目薬の点眼だけでは緑内障の進行を止められない場合、手術を検討します。手術をすることで、物理的に眼圧を下げることで、視野を守ります。失明を防ぐためには必要となります。

 

2.緑内障手術の流れ:検査〜手術まで

当院では日帰り手術を行っています。
大きな流れとして、手術前に来院→手術→手術翌日の来院→経過観察の来院となります。

手術前の来院  

手術当日

手術の翌日

3.緑内障手術の術式について

トラベクロトミー(線維柱帯切開術)

房水の排水溝である線維柱帯を切開し、房水の通り道を通りやすくします。
特に白内障手術と組み合わせての同時手術は眼圧下降効果が高いことが知られており、白内障手術と合わせても通常10分ほどで終わります。切開の際に眼内に出血するため、術後しばらくは見えにくいことがありますが、数日で出血は吸収され改善することがほとんどです。

トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)

眼圧を下げるために、房水の排出路となる線維柱帯の一部を切除し、房水が自然に排出される新しい出口(濾過胞)を作ります。この術式は眼圧下降効果が非常に高く、特に重度の緑内障患者に適しています。術後は、濾過胞が正常に機能するよう注意深い経過観察が必要です。また、術後しばらくは眼が充血したり、濾過胞の異常による視覚の変化を感じる場合がありますが、多くの場合は時間とともに改善します。手術は通常20~30分ほどで完了します。

当院ではアルコン社のアルコンエクスプレスという製品を使用しています。従来の緑内障手術と比較し、手術に伴う合併症が少なく、術後早期の視力回復が得られると報告されています。

本体(先端部)を眼の中に穿刺留置することで、房水の流出路を作製します。眼圧の下降を可能とする製品です。以下は参考画像です。

アルコンエクスプレスの参考画像

 

SLT(レーザー繊維柱帯形成術)

線維柱帯にレーザーを照射することで、房水の排出を促進し眼圧を下げる治療法です。切開を伴わないため、低侵襲で患者の負担が少ないことが特徴です。特に初期の緑内障や薬物療法で効果が不十分な場合に適しています。治療時間は数分程度で、外来で受けることが可能です。施術後は軽い目の違和感を覚える場合がありますが、通常は1日以内に改善します。

LI(レーザー虹彩切開術)

レーザーを用いて虹彩に小さな穴を作り、房水の流れをスムーズにして眼圧を下げる手術です。主に急性閉塞隅角緑内障の治療やその予防に用いられます。外来で行える低侵襲な治療で、施術時間は数分程度です。施術後、目の充血や軽い違和感を感じることがありますが、短期間で収まるのが一般的です。術後の経過観察が重要であり、定期的なフォローアップが必要です。

4.緑内障手術の費用と保険適用について

一般的な手術費用の目安

健康保険の適用がありますので、自己負担割合、手術内容により金額が異なります。
自己負担割合がどれにあてはまるかわからない方は、日頃病院に受診されている際の負担割合だとおもってください。詳しくは健康保険発行の窓口にご確認ください。
また、高額療養費制度も適用できます。
以下は目安となりますので、参考にされてください。
同じ手術術式でも手術内容によって料金が異なります。

トラベクロトミー(線維柱帯切開術)

健康保険負担割合 費用目安
自己負担割合1割の方 片目約18,000円
自己負担割合2割の方 片目約18,000円
自己負担割合3割の方 片目約46,000円

 

トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)

健康保険負担割合 費用目安
自己負担割合1割の方 片目約18,000円
自己負担割合2割の方 片目約18,000円
自己負担割合3割の方 片目約110,000円

SLT(レーザー繊維柱帯形成術)

健康保険負担割合 費用目安
自己負担割合1割の方 片目約18,000円
自己負担割合2割の方 片目約18,000円
自己負担割合3割の方 片目約30,000円

LI(レーザー虹彩切開術)

健康保険負担割合 費用目安
自己負担割合1割の方 片目約7,000円
自己負担割合2割の方 片目約14,000円
自己負担割合3割の方 片目約20,000円

高額療養費制度について

高額療養費制度 

医療機関、薬局の窓口で支払う医療費が月(1日〜末日まで)の上限額(自己負担額)を超えた場合に、超えた分は健康保険から補填される制度です。自己負担額については、年齢や所得によって異なります。

外来診療の場合

・69歳以下の方(現役並みの所得の70歳以上の方) 上限は様々です。

・それ以外の70歳以上の方 8,000~18,000円 また年間上限144,000円

※70歳以上で負担割合が1割・2割の方は限度額認定証の提示がなくても18,000円以上はかかりません。

詳細は厚生労働省のホームページにある「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をご参照下さい。

 

5.緑内障手術の術後と注意点について

術式ごとの注意点

トラベクロトミー(線維柱帯切開術)

・一時的な視界の低下
術後、眼内の軽い出血が原因で視界がぼやけることがありますが、通常は数日で改善します。出血が長引く場合は医師に相談してください。

・感染予防、炎症管理
術後、眼の炎症を抑えるために点眼薬や内服薬を指示通り使用してください。炎症が強い場合、眼圧が一時的に上昇することがあります。

 

トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)

・濾過胞の管理
濾過胞が適切に機能しているかを確認するため、定期的な診察が必要です。濾過胞が過剰に機能すると低眼圧、機能不全になると高眼圧を引き起こします。

・感染予防
濾過胞を通して外部とつながる部分があるため、感染症(濾過胞炎)のリスクが増加します。手術後は清潔に保ち、異常を感じたらすぐに医師に相談してください。

・激しい運動の制限
術後数週間は激しい運動や眼を圧迫する動作(重いものを持つ、寝転がる際に顔を下に向けるなど)は避けてください。

 

SLT(レーザー線維柱帯形成術)

・短期的な眼圧の変動
施術後数日間、眼圧が一時的に上昇することがあります。異常な痛みや視界の変化を感じた場合はすぐに受診してください。

・軽い違和感
術後に軽い目の違和感や異物感があることがありますが、通常は数日で改善します。

・点眼薬の継続
手術後も、医師の指示がある場合は点眼薬を継続する必要があります。

 

LI(レーザー虹彩切開術)

・光の見え方の変化
術後、虹彩の切開部分が原因で光のにじみやちらつきが一時的に生じる場合がありますが、通常は時間とともに慣れていきます。

・急性発作のリスク回避
閉塞隅角緑内障の治療や予防のために行われるため、術後は隅角の状態を定期的に確認します。

・日常生活への復帰
低侵襲な術式のため、通常の生活にはすぐに復帰可能ですが、術後数日は目を保護するよう心がけてください。

 

共通の術後の注意点

・定期的な診察
術後の回復や眼圧の安定を確認するため、指定された日に必ず診察を受けてください。術後の経過観察が治療成功の鍵です。

・異常の早期発見
強い痛み、視力の急激な低下、目の充血が続くなど異常がある場合はすぐに医師に連絡してください。

・紫外線対策
術後は目が敏感になりやすいため、外出時はサングラスを着用して紫外線を防ぎましょう。

・目薬の使用
点眼薬の使用を怠らないようにしてください。眼圧や炎症をコントロールするための重要な手段です。

術後の注意点は患者様の状態によって異なる場合がありますので、生活や管理については当院の医師にご相談の上、定期的に診察を受けてください。

6.緑内障手術のQ&A

Q. 緑内障は手術してもよくならないこともあるか知りたい。なぜ手術をするのですか?

A. 緑内障手術の目的は、視力を回復させることではなく、眼圧を下げて病気の進行を防ぐことにあります。緑内障は、眼圧が高くなることで視神経が徐々にダメージを受け、視野が狭くなっていく病気です。一度失われた視神経の機能や視野は回復しませんが、手術によって眼圧を下げることで、それ以上の視野の喪失を食い止めることが可能です。適切なタイミングで手術を受けることで、現在の視力や視野を維持し、日常生活の質を保つことができます。

 

Q. 手術後、日常生活に戻るのにどれくらい時間がかかりますか?

A. 緑内障の手術後は、術式によって回復までの時間が異なりますが、数日から数週間程度で通常の生活に戻ることができます。ただし、術後しばらくは目を保護する必要があり、激しい運動や目に負担をかける行為(長時間の読書やパソコン作業など)は控えるよう指導されることが一般的です。医師の指示に従い、経過観察を受けながら慎重に日常生活を再開してください。

7.まとめ

緑内障手術は、進行を食い止め、視野を守るための大切な治療法です。視力の回復は期待できませんが、適切な治療を受けることで、失明のリスクを大幅に減らすことが可能です。手術の種類や費用、術後の注意点を理解し、不安を解消することで、より安心して治療に臨むことができます。
緑内障は早期発見が非常に重要です。当院では、患者様一人ひとりに最適な治療法を提案し、丁寧にサポートいたします。気になる症状やお悩みがある方は、ぜひ当院にご相談ください。視野を守るために、私たちと一緒に最善の治療を考えていきましょう。