1.硝子体内注射(抗VEGF薬治療)とは
硝子体内注射とは?
硝子体内注射とは、目の中に直接薬を注射する治療法です。この方法が選ばれる理由は、目の病気を治す薬を、病気の原因となる部分に確実に届けるためです。
飲み薬や点滴では、目の奥まで薬が届きにくいため、十分な効果を得られないことがあります。一方で、硝子体内注射なら目の中に直接薬を届けることができるため、より高い効果が期待できます。
また、注射は局所的に行うため、全身への負担が少ないことも大きなメリットです。これにより、多くの患者さんに安全に治療を受けていただけます。
抗VEGF薬とは何か?
抗VEGF薬は、視力を守るために使われる特別な薬です。「VEGF(血管内皮増殖因子)」という物質が体内で増えすぎると、目の奥で異常な血管が作られたり、むくみ(浮腫)が起きたりします。これが原因で視力が落ちたり、病気が進行することがあります。
抗VEGF薬は、このVEGFの働きを抑えることで、目の病気が進むのを防ぎます。特に、目の奥にある「網膜」や「黄斑」という部分の病気に効果的です。この薬を直接目に注射することで、病気の原因となる部分にしっかり届きます。
視力を守るための重要な治療法
硝子体内注射は、視力を守るために非常に効果的な治療法です。この治療が主に使われるのは、加齢黄斑変性症、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症などの病気です。これらの病気は、放置すると徐々に視力が低下し、最悪の場合は失明につながることもあります。
硝子体内注射は、これらの病気の進行を抑え、視力の維持や改善を目指す治療です。治療を早く始めるほど、視力を守れる可能性が高くなります。近年では、この治療を受けることで日常生活に支障をきたさずに過ごせる患者さんが増えています。
2.硝子体内注射が適応される主な疾患
主な疾患として加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)、網膜静脈閉塞症、病的近視(脈絡膜新生血管)などがあります。
●加齢黄斑変性症
老化によって網膜の中心部である黄斑が障害され、視力が低下する病気です。
●糖尿病網膜症(糖尿病黄斑浮腫)
糖尿病の合併症として発症する目の病気です。血糖値が高い状態が続くことで、網膜の血管が傷つき、視力が低下する原因となります。
●網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、目の奥にある網膜の静脈が詰まることで血流が滞り、浮腫や出血が起きる病気です。
●病的近視(脈絡膜新生血管)
強度近視により脈絡膜に新生血管が生じ、出血や浮腫を引き起こします。
3.硝子体内注射手術の流れ
1.術前検査・診察
視力検査、眼底検査、OCT検査などを行い、治療の適応を判断します。
2.手術当日
点眼麻酔後、白目の部分から極細の針を用いて硝子体内に薬剤を注射します。
3.手術翌日
経過観察のため、再度受診していただきます。
4.硝子体内注射術後の生活と注意点
術後の生活
硝子体内注射後は、治療効果を高め、副作用や合併症を防ぐために以下の点に注意してください。
・目の清潔を保つ
・目をこすったり、汚れた手で触らないようにしてください。
・指示された抗菌点眼薬を正しく使用し、感染症を防ぎます。
・激しい活動を控える
・術後1週間程度は、水泳や重い荷物を持つような激しい運動を控えてください。
注意点
・強い痛みや視力の急激な低下、目の腫れや赤みが現れた場合は、すぐに眼科を受診してください。
5.硝子体内注射の投与間隔
症状によって異なる治療スケジュール
硝子体内注射の治療スケジュールは、患者様の症状や疾患の進行状況によって異なります。
一般的には初めの数か月間に月1回の注射を行い、病気の進行をしっかりと抑え、症状が安定した後は、間隔を延ばしながら必要に応じて注射を続けます。
●定期的な注射の重要性
硝子体内注射は、1回の治療だけで完了するものではありません。定期的に注射を行うことで、効果を持続させ、病気の進行を抑えることが可能です。
●治療を続ける理由
抗VEGF薬の効果は一時的なため、注射後しばらくすると薬の効力が弱まり、症状が再発することがあります。そのため、定期的な注射が視力を守るために欠かせません。
●治療プランの柔軟性
症状が安定している場合、注射の間隔を徐々に延ばすことが可能です。これにより、患者様の負担を軽減しつつ、効果的な治療を続けることができます。
6.硝子体内注射のQ&A
Q.注射は痛いですか?
A.硝子体内注射は、点眼麻酔を使用して行われるため目に力を入れなければ、ほとんど痛みを感じることはありません。注射中に軽い圧迫感や違和感を感じることがあります。注射後に目の中に異物感を覚える場合もありますが、これも時間とともに改善するのが一般的です。
Q.治療を続けることで視力はどれくらい改善しますか?
A.視力の改善は、疾患の種類や進行具合によって個人差があります。抗VEGF薬治療は、視力を劇的に改善するというよりも、病気の進行を抑えて視力を維持する効果が主な目的です。
ただし、症状が軽い段階で治療を始めた方ほど、視力の改善が期待できるケースが多いです。
Q.硝子体内注射は何回くらい必要ですか?
A.硝子体内注射の回数は、患者様の疾患や症状の進行具合によって異なります。治療を継続することで病気の進行を抑えることができるため、医師と相談しながら適切なタイミングで治療を受けることが重要です。
7.まとめ
硝子体内注射は、視力を守るための非常に効果的な治療法です。この治療では抗VEGF薬を用いて、網膜のむくみを抑えたり、異常な血管の成長を抑制することで、視力の低下を防ぎます。
また、早期治療が視力を守る鍵となります。
加齢黄斑変性症や糖尿病黄斑浮腫などの疾患は、進行すると視力が急激に低下するリスクがありますが、早めに治療を開始すれば、病気の進行を抑え、視力を維持する可能性が高まります。
当眼科では、硝子体内注射をはじめとした最新の治療を提供し、患者様一人ひとりに合った治療計画を立てています。
治療に関する不安や疑問があれば、ぜひご相談ください。視力を守るため、最適な治療法をご提案し、全力でサポートいたします。まずはお気軽にご来院ください。