疾患がない正常な状態の視界は、はっきりとしたカラーの世界で彩られています。
もし、日中なのに暗く感じたり、眼の中心部分だけ暗く感じる(中心以外の周辺は明るい)、くすんでいる、見えづらい等があれば、それはなにかの病気のサインの可能性があります。
ここでは目の中心がなぜ暗く感じるのかについて、考えられる詳しい症状を紹介します。
#CASE 06目の中心部が暗く感じる
01目の中心が暗く感じるのは
病気のサイン?
02視野の中心が見えない、
暗く感じる原因と疑われる病気は?
中心性網膜炎
中心性網膜炎は網膜(カメラでいえばフィルムに当たる組織)の中心部分である黄斑(おうはん)が腫れてしまい、視野の中心がぼやけたり、ゆがんだり、見えなくなったりします。
黄斑はモノを見るうえで最も重要な部分です。中心性網膜炎の明確な原因は完全には解明されていません。一般的にはストレスが過度にかかることで発症するとされており、30代から50代までの男性に多くみられる症状です。
中心性網膜炎は通常3~6ヶ月で自然に治癒します。治療をする場合は黄斑部の腫れを取る必要があるため、一般的には消炎薬、循環改善薬、ビタミン剤などの内服が行われます。内服治療で症状が改善されない場合、光凝固術を行うことがあります。これは、網膜色素上皮の弱まっているところをレーザーで焼いて補強するためです。ストレスが原因のひとつとされていることから心身の療養も必要とされています。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症は黄斑(おうはん)が加齢により萎縮や変性することで、視力低下を引き起こす病気です。中心視野がぼやける、色が見えにくくなり、多くの人が見えている正常の色彩と異なって見え、特定の色が識別しづらくなります。場合によっては視野の中心部分が暗くなり、欠け・穴が空いたように感じることがあります。
原因は加齢、遺伝、生活習慣といわれています。喫煙、高血圧、高脂血症などの生活習慣が進行を早めていると考えられています。
進行性の病気で、「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあり、日本人は「滲出型」といわれています。滲出型の治療法は以下のとおりです。
「抗血管新生療法」は眼に直接注射する治療法で、月に1回3か月間注射し、以後は必要に応じて注射します。
「光線力学的療法」は病変部に弱いレーザーを当てる治療法で、3か月ごとに治療を行っていきます。
「レーザー光凝固術」はレーザーで焼き切る治療法です。
黄斑上膜
黄斑上膜は、黄斑の視細胞が碁盤の目のように整然と並んでいるところを膜が引っ張って配列を乱すことで、物が歪んで見える、視力が低下するなどの症状を引き起こします。進行すると網膜にシワができ、変視症と呼ばれる症状も現れます。
原因は加齢によるものとされており、数年から10数年かけて少しずつ進行していきます。
眼球の奥底に生じる病気なので薬や眼鏡等で治すことはできませんが、症状が軽度で日常生活に支障がない場合は経過観察を行います。進行した場合は手術を検討する必要があります。硝子体手術といわれる眼球内の硝子体を除去し、黄斑上膜を剥がします。
手術と言っても白内障(眼内への注射)と同時に行うこともあり、多くの症例で1時間程度で終わり、日帰り手術も可能な病気です。
黄斑円孔
黄斑円孔は網膜の中心にある黄斑の「中心窩(ちゅうしんか)」に丸い小さな穴(0.5mm以下)が開く病気です。ごく小さな穴ですが、最も視力が鋭敏な部分にできるため、大きな影響が現れます。具体的には急激な視力低下とモノが歪んで見えることです。病状が進行していくと視界の中心が欠け、中心暗点という症状が現れます。原因は加齢によって硝子体が液状化し、網膜から剥がれる際に黄斑を引っ張ることで起こるといわれています。進行性の病気のため早期治療が必要です。
治療法は空いた穴を塞ぐ必要がありますので、手術を行うことになります。硝子体手術を行い、硝子体を除去し、黄斑を引っ張る力を解除します。目の中に医療用ガスを入れます。そのため、数時間から数日程度のうつぶせなどの姿勢制限が必要になります。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は糖尿病を患っている方で血糖コントロールが悪い状態が長引くと、網膜にも血管障害が起こります。初期によく見られる症状で、まるで霧がかかったように全体がぼやけて見えることがあります。また、黒い点が浮遊する飛蚊症も現れます。黄斑分の障害のサインとして、視野の中心部が暗くなり、ぼやける症状も出てきます。悪化すると網膜出血(眼底出血)や網膜剥離などが起こって視力が低下したり失明したりすることがあります。
糖尿病網膜症は、進行するまで自覚症状が乏しいこともあり、日本における失明の3番目に多い原因と言われています。
治療方法はまずは血糖値のコントロールが基本になります。眼科の治療は硝子体注射で眼内に薬剤を注射します。状況により、レーザー光凝固術や硝子体手術を行っていきます。
中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)
中心性漿液性脈絡網膜症は網膜の中心にある黄斑に浮腫(むくみ)が生じる病気です。黄斑に網膜の血管から水分がにじみ出て、液体・水が溜まることで起こります。中心視野にかすみや、ゆがみが現れます。中心だけが暗く見える中心暗点も起こり、小さく見えたりし、違った色に見える色覚異常がおこります。片目のみの発症が多く、稀に同時に両目で発症します。30代〜40代の方が多く発症しており、原因としてストレスが挙げられています。
自然に治癒することが多く、経過観察を行うのが一般的です。症状が軽度であれば、数週間から数か月で自然に回復することが多いため、経過観察が必要です。
症状が重度の場合はレーザー光による凝固術治療や内服薬による治療が行われます。
03予防のために日常生活で
気を付けることや簡単な対処法
さまざま疾患を紹介してきました。一言で目の中心部が暗く感じるといってもさまざまな病気があることがわかりました。これらの病気を予防するためには日常生活でできることを心がけましょう。
食事・血糖値・血圧のコントロール
糖尿病になると失明のリスクがつきまといます。日頃からバランスの取れた食事を取るように心がけましょう。食べ方ひとつとっても、まずは野菜から食べるように心がけましょう。そして、しっかりと咀嚼し、時間をかけてゆっくり食べることが肝心です。また、満腹まで食べるのではなく、腹八分目を意識するようにしましょう。自ずと血糖値も落ち着いてくるはずです。
血圧は定期的に図り、自分の血圧の幅をしっかりと把握するようにしてください。
何事もコントロールが大事です。日頃から気にして過ごすようにしましょう。
たばこは目の血管を傷つけ、様々な疾患のリスクを高めますので、可能であれば控えるようにしていきましょう。
適度な運動と水分補給
運動は血行をよくするため、いい影響を与えます。できれば、週に複数回有酸素運動を行っていきましょう。運動の前後には水分を取るように心がけてください。
日中に運動する場合は、紫外線対策を行いましょう。紫外線は目にダメージを与えます。長時間紫外線を浴びるときは対策をしましょう。
定期的な眼科検診
どの病気も早期発見と早期治療を行うことが大切です。40代以上の方は定期的に眼科で検査を行い、医師と話しましょう。1年に1回は受診するようにしてください。早期予防に繋がります。特に眼の病気は進行してしまっては手遅れであることが多く、視野や視力を失ってしまうと回復することができません。現状維持の治療になってしまいますので、事前にできることを行っていきましょう。
簡単な対処法
さまざまな症状がありますが、紹介する対処法を行い、それでも症状が軽減されない場合は眼科を受診することをおすすめします。
・目を温めるまぶたの上からホットタオルで覆いましょう。血流をよくし、目のまわりの筋肉の緊張を緩和させることができます。できれば使い捨てカイロや蒸気マスク等の方が持続時間も長いといわれているので、活用してみてください。
・目を休める・睡眠疲労が蓄積することが原因のこともあるため、ゆっくりと目を休ませましょう。目は起きている限り視覚情報をキャッチしてくれています。そのため、意図的に眼を閉じることをしない限り、視覚情報を得てしまいます。疲労を少しでも感じたら、30秒だけでもいいので眼を閉じてみましょう。
04視界や見え方が気になる方は
当院までご相談ください
目の中心部が暗く感じるといった症状は、放置すると視力低下の可能性があります。視界や見え方も変化する場合もあります。
受診を検討する目安として、なにかしらの症状がある場合は、症状が継続している、症状が悪化している、他の病気と思われる症状が伴っていること、日常生活に支障が出るレベルがどれか1つでもあてはまれば受診しましょう。
眼の病気の場合は進行してしまうと回復が難しい場合もあります。そのため、特に40代以上の方は定期的な受診をしていただくと、手遅れという状態になりません。
当クリニックは結膜炎、白内障、緑内障、糖尿病の眼の合併症、麦粒腫・霰粒腫、網膜疾患などの治療をしており、手術においても白内障手術、硝子体手術、まぶた手術、硝子体内注射、レーザー治療を行っています。
医院の開院後は地域に根ざした病院として、丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。地域の皆様のかかりつけ医としてぜひ当院にご相談ください。