#CASE 08視野が欠ける
(狭くなった)

01視野が欠けて見える原因は

視野が欠けて見える(視野異常)はどんな症状?

視野が欠けるというのは視野の一部が見えなくなる状態を指します。同じ視野の中で通常通り見える部分と、かすみがかかって見えづらい部分があり視野の一部がぼやけてしまうような状態のことです。(色は識別できます)
症状によってはカーテンで仕切られたように特定の範囲が丸々見えなくなることもあります。

どんな仕組みで視野が欠けるの?

視野の欠け方はさまざまで、原因となる疾患によって異なります。
一般的に「ものが見える」状態とは眼球から脳へと視覚情報が伝わって、はじめて映像になります。
視野が欠けた状態は眼球から取得された情報が脳へ伝わる途中のどこかに障害が起きることで、情報が正しく伝達されない状態になります。
情報がきちんと脳に伝達されないことで、抜け落ちた情報の部分が“視野の欠けている部分”となってしまい、結果「視野の欠け」として認識されます。

欠けは片目だけに起こることも

視野の欠けは片目だけに生じることもあります。ただし、片目だけに視野がかけた症状があらわれても、非常に気づきにくいです。
理由としては、人間の目は両目でモノを見ており、片方の視力が悪くて、もう片方の視力が良いとした場合に、視力が悪い方の目で不鮮明に写っていたとしても、視力の良いほうの目で見た映像が上書きされることとなり、視力の悪い方の目の働きを補完します。
結果、片目の視野が欠けたとしても、両目で見ると補完する働きによって、綺麗な映像として認識されることになります。
そのため、違和感を感じづらく、片目の視野がかけても気づかない場合がほとんどです。

02視野が狭くなる病気や疾患の
原因と治療方法

視野が狭くなる(欠ける)という症状は様々な眼の疾患や神経系の病気によって起こっています。
主な6つの疾患について疾患が生じる原因と症状、治療法に分けて解説していきます。

視野が狭くなる疾患「緑内障」について

眼圧が上昇することによって、視神経(100万本以上の神経線維が束になったケーブルのような組織)に圧力がかかることでダメージを受けて視野が狭まっていく病気です。視神経の損傷度合いによっては失明に至ります。
初期症状の自覚症状が乏しいため、症状が進行することが多く、日本人の中途失明の原因1位の疾患です。
また、40歳以上の有病率約5%の疾患になります。

【 原因 】なにかしらの理由で眼圧が上昇することによって起こります。糖尿病などの疾病によって、症状が悪化することが多くあります。また、房水(眼の中の液体)の排出不良や排出口の狭窄や不全により、眼圧が上昇することで起こることもあります。

【 症状 】視野が狭まり、トンネルの中を覗いているような感覚になることがあります。ただし、症状は徐々に進行していき、片目だけに症状が出るケースも多いため、なかなか気づきづらいことが特徴です。
初期症状が乏しく、自覚しづらいため、症状に気づいたときには治療が手遅れな段階であるということも多いです。

【 治療方法 】病状や進行度合いによって異なりますが、基本的には眼圧を下げることが緑内障を抑えるためのポイントになります。
ただし、緑内障により死んだ視神経は回復することはありません。そのため、緑内障は治る病気ではありません。
治療は進行を遅らせることで、生涯にわたり視力を保つようにするのが目的となります。
治療法としては、薬物療法は点眼薬(目薬)が一般的で、眼圧を下げる効果があります。
レーザー治療は房水の排出を促す目的で行われることがあります。
手術は薬物療法やレーザー治療で眼圧を下げる措置をとっても効果がない場合に行われます。

網膜剥離について

眼の中にある網膜(カメラのフィルムのような視細胞組織)が、壁から剥がれしまう病気で、視力が低下します。発症から期間が経過すると失明する可能性が高くなるため、早期に治療を行う必要があります。
網膜は目の中に入ってきた光を電気信号に変える働きをして、脳に伝達する役割を担っています。網膜が剥がれても痛みが伴わないため、認識できず、症状に気づきにくい病気です。

【 原因 】網膜剥離の原因は主に3つ挙げられます。
1つ目は加齢により、硝子体が液化し、網膜から剥がれることがあります。
2つ目は眼内の炎症により、網膜が引っ張られて剥がれることがあります。
3つ目は外傷により、眼球へ直接強い衝撃を受けたときに剥がれたり、裂けたりします。

【 症状 】主な症状は以下のとおりです。
・蚊が飛んでいるように見える。
・目の中に黒い点や糸が見える。
・光がギラギラとする。
・光があたっていないのに、光を感じる。
・光が見え、閃光が走ったように感じる。
・視野が暗くなる。
・視野の一部が見えなくなったり、視野が暗くなったりすることがある。

【 治療方法 】レーザー治療や手術による処置が一般的です。
早期発見・早期治療が実施できれば網膜を元の位置に戻すことも可能です
進行をいち早く止め、これ以上悪化させないことが大事になります。

網膜色素変性について

遺伝子のキズ・異常によって網膜の細胞が変性し、視力低下などの症状を引き起こす病気です。
人口約5,000人に1人の割合で患者さんがいるとされ、自覚症状で「暗いところで見えにくい」「星が見えない」などの夜盲(鳥目)が多いとされています。国指定難病の特定疾患です。

【 原因 】遺伝子のキズというと、必ず遺伝すると思いがちですが、必ず遺伝するわけではなく、突然発病するケースもあります。
家系に同じ病気の人が確認できず、遺伝形式が推測できない突然発病したような孤発例も多く見られ、約半数を占めています。

【 症状 】症状は進行状況により変化します。初期症状と進行した場合の症状は以下のとおりです。
・初期症状
夜盲:夜盲は暗いところ、夜が見えにくくなる。
視野狭窄:視野狭窄は視野が狭くなる、一部が見えない。
・進行した場合の症状
中心視力の低下:物がぼやけて見える。
色覚異常:色の見え方が変わる。
浮遊物:視界に黒い点や糸状ものが浮遊する

【 治療方法 】世界中の眼科医が研究していますが、残念ながら根本的に治す治療法が確立されていません。そのため、発病した場合は症状の進行を遅らせ、質の向上を図るため、暗順応改善薬(ヘレニエン)、ビタミンA、循環改善薬などの内服を行うことがありますが効果は証明されていません。
なお、現時点で病気の進行を遅らせることが期待される薬も報告されてきており、近い将来有効な薬が出てくるだろうと予想されています。

中心性網膜炎(中心性漿液性脈絡網膜症)について

網膜の中心にある黄斑部(最も視力に関係する部分)に浮腫(むくみ)が生じる病気です。片目に発症しますが、稀に両目同時に発症することがあります。
多くの場合は良好な経過をたどり、自然治癒することが多い病気です。状況によっては再発を繰り返すことがあります。

【 原因 】明確な原因は不明と言われています。黄斑に網膜の血管から水分がにじみ出て、液体が溜まることで起こります。溜まる原因は解明されていません。
30代から50代の働き盛りの男性に多く発症が見られることからストレスが原因と言われています。

【 症状 】症状は軽度の視力低下です。むくみが治ると症状は軽快しますが、見にくさが残る場合もあります。再発を繰り返す場合には視力低下を引き起こすことがあります。
視力低下以外の症状は以下のとおりです。
・症状一覧
中心暗点:視野の中心部分が暗くまたは白く見える。
小視点:実際よりも小さく見える。
変視症:モノがゆがんで見える。

【 治療方法 】自然治癒が多いため、経過観察が一般的です。レーザー治療では原因箇所が黄斑の中心から離れていれば可能です。早期回復と再発予防効果が期待できます。レーザーによる治療ができない場合は内服薬を使った治療を行います。

黄斑上膜について

眼球の奥にある黄斑に薄い膜ができてしまい、視力に影響する病気です。薬や眼鏡等で治すことはできませんが、症状が軽度で日常生活に支障がない場合は経過観察を行います。
進行した場合は手術を検討する必要があります。

【 原因 】一般的な原因は加齢です。加齢に伴う硝子体の変化により起こります。数年から10数年かけて少しずつ進行していきます。他にも原因としては、眼の炎症や眼の外傷があります。

【 症状 】モノを見る中心である黄斑の上に膜ができるため、膜越しにモノを見ることになります。
主な症状は以下のとおりです。
・症状一覧
中心視力の低下:ぼやけて見えたり、ゆがんで見えたりする
直線が曲がって見える:文字や線がゆがんで見えたりする
視覚の歪み:物体が浮き上がったり、凹んだりして見える

【 治療方法 】症状が進行し日常生活に影響が出た場合は手術となります。硝子体手術といわれる眼球内の硝子体を除去し、黄斑上膜を剥がします。手術と言っても白内障(眼内への注射)と同時に行うこともあり、多くの症例において1時間程度で終わり、日帰り手術も可能な病気です。

黄斑円孔について

網膜の中心にある黄斑に丸い小さな穴が開く病気です。進行性の病気のため早期治療が必要です。

【 原因 】加齢に伴い、眼球内のゼリー状の物質・水(硝子体)が液化し、縮み、黄斑を引っ張ることで穴が開いてしまうことが原因です。

【 症状 】代表的な症状としては急激な視力低下とモノが歪んで見えることです。病状が進行していくと視界の中心が欠ける中心暗点という症状が現れます。

【 治療方法 】空いた穴を塞ぐ必要がありますので、手術を行うことになります。
硝子体手術を行い、硝子体を除去し、黄斑を引っ張る力を解除します。目の中に医療用ガスを入れます。そのため、数時間から数日程度のうつぶせなどの姿勢制限が必要になります。

03緊急性の高い視野欠損

急な症状で、大きな変化があったときは注意してください。
代表的な症状を紹介します。

視野が急激に狭くなる

数分~数時間という短時間で視野が狭くなる場合、緑内障(急性緑内障発作)、網膜中心動脈閉塞症などの重篤な病気が疑われます。

視野の中心部が急に黒く塗りつぶされたようになる

網膜剥離や黄斑円孔などの可能性が高く、早急な治療が必要となります。

視野にギザギザの影が見える

網膜剥離や視神経炎などの可能性があり、放置すると視力が低下する恐れがあります。

04視野欠損の症状で不安な方は
当医院までご相談ください

眼科を受診する目安とポイント

突然、頭痛・吐き気(目以外の症状を伴う)どれか1つでも該当する場合は医師による診療を受けましょう。
目の病気は治療が遅れた場合に取り返しがつかないことが多くあります。
また、慢性的にゆっくりと進行していく病気もあるため、なにかしら変化に気付いたときにはそのタイミングがベストな眼科受診のタイミングです。

早めの診察と検査を行いましょう

視野欠損はさまざまな病気の可能性があります。症状によりさまざまですが、どれも早期の検査と治療が大事になってきます。もし、異変や違和感に気づいたら診察をおすすめします。
視野欠損の症例を含め、大阪市立大学時代に、さまざまな症例の手術・診療をしてきましたので、難症例にも対応可能です。安心してお任せください。気になることがあれば、まずは当医院にご相談ください。

定期的に目の健診を

目の病気は加齢が原因であるものが多くあるため、40代以上の方は定期的な受診をおすすめしています。なにかあってからでは遅いのが目の疾患です。地域のかかりつけ医として、ぜひ当クリニックにご相談ください。