色がかすんだり、見えにくくなった時に注意したいのが、通常とは色が異なって見える色覚異常です。
色覚異常は、先天性と後天性にわかれます。先天性は生まれつき、後天性は生まれたのちに色覚異常になることを指します。
先天性の特徴は、両目に症状が現れやすいこと、状態が変化しないことです。生まれつき通常とは色が異なって見えるため、自覚しにくい点も特徴といえるでしょう。
同じ色覚異常でも、判別しにくい色は人により異なります。比較的、多いと考えられているのが、赤と緑、緑と茶、青と紫などの判別を苦手とするケースです。
#CASE 09色がかすむ、見えにくくなる
01色がかすむ、見えにくくなる症状とは?
02色がかすむ、見えにくくなる疾患と治療法
後天性の色覚異常の特徴は、色覚以外の異常(視野や視力など)が起こりやすいことと、原因になっている病気の状態により症状の現れ方が変化することにあります。
これから主な後天的な色覚異常を生じる疾患について「症状」「原因」「治療法」について解説していきます。
糖尿病網膜症
【 症状 】高血糖状態が続くことで、網膜がダメージを受け、目のかすみや視力低下を招きます。
【 原因 】網膜は、カメラのフィルムのような役割を果たす組織と言えるでしょう。したがって、ダメージを受けると、目がかすむ視力が低下するなどの症状が現れます。また、青と黄を判別しにくくなる色覚異常などを伴うこともあります。同様の症状は、他の網膜の病気でも起こりえます。
【 治療方法 】食事療法と運動療法が基本です。これらに取り組んでも血糖値をコントロールできない場合は経口血糖降下薬などを用います。症状が進行しているときは、眼底の病変部を焼き固めるレーザー照射術などを行うこともあります。
白内障
【 症状 】加齢の影響などで、カメラのレンズのような役割を果たす水晶体が濁る病気です。進行すると、目がかすむ、以前よりまぶしく感じる、視力が低下するなどの症状が現れます。また、水晶体が黄色っぽく変色することで、色の感じ方にも変化が起こります。具体的には、青を感じにくくなる一方で黄色などを強く感じるようになるのです。
白内障の場合、ごく初期のころであれば水晶体の色の変化も小さいため、見え方が違うことには気付きません。しかし白内障が進行してくると、徐々に水晶体のにごりが強くなることで、物の見え方の変化に気付くようになります。
【 原因 】レンズの役割を果たす水晶体が加齢等の影響によってにごり、レンズを通過する光に影が生じることから見る景色に曇りが生じます。
【 治療方法 】症状が軽い場合は、目薬や内服薬で進行を遅くできる可能性があります。目薬などで、混濁した水晶体を元の状態に戻すことはできません。ものが見にくいなど、日常生活に支障が生じるほど症状が進行した場合は、濁った水晶体を眼内レンズに置き換える手術を行います。
緑内障
【 症状 】眼圧で視神経がダメージを受けて、視野が狭くなる、視野が欠けるなどの症状を引き起こす病気です。これらに加え、色覚障害を起こすこともあります。
【 原因 】眼圧が高まることで、錐体に影響が及び視神経の伝達を阻害します。
【 治療方法 】緑内障には、いくつかのタイプがありますが、正常眼圧緑内障以外は、眼圧の上昇が原因で視神経が障害されて視野が欠けていく病気です。傷ついてしまった視神経や欠けてしまった視野は、元に戻ることはありません。緑内障の治療は、上昇した眼圧をコントロールして、出来る限り病気の進行を食い止めることが最大の目標です。
眼圧が高くない方も、この治療により症状の進行を抑えられる可能性があります。治療を行っても症状が進行する場合は、房水を排出しやすくする手術を行います。
錐体ジストロフィ
【 症状 】錐体ジストロフィーとは、錐体細胞の機能が徐々に障害されることによって、視力低下、羞明(しゅうめい。まぶしく感じること)、色覚異常などが進行する疾患です。
また、進行に伴い錐体機能に続いて杆体機能が障害されることも多く、そのような病態は錐体-杆体ジストロフィーと呼ばれています。
【 原因 】錐体ジストロフィは遺伝子が原因の疾患です。
【 治療方法 】錐体ジストロフィは、残念ながら現在の医療では治すことや進行をとめることができません。
網膜の再生医療の研究は少しずつ進んでいますが、錐体は網膜の中心で最も繊細な部分(黄斑)にあるため、再生医療での治療はまだまだ難しいと考えられます。
網膜色素変性症
【 症状 】網膜色素変性症は、少しずつ視野が狭くなり、視力が低下する遺伝性の病気です。
進行に個人差が大きく、徐々に進行して失明することもあれば、ずっと最期まで良好な視力を保つこともあります。
色覚異常は青黄色異常(赤と緑はわかるが青と黄色がわからない)が高い確率で見られます。また外界と関係なく、色のついた光や点滅する光のようなものを感じることがあります。これらの症状は一過性のものもあれば、ずっと続く場合もあります。
【 原因 】網膜色素変性症は、初期には杆体細胞のみが侵されるため、視力障害はみられないことが多いです。病気の進行に伴い、錐体細胞の変性が生じてくるために視力障害や色覚異常が出現します。
【 治療方法 】網膜色素変性に対しては、現在のところ残念ながら根本的な治療法がありません。
症状の進行を遅らせることを期待して、暗順応改善薬(ヘレニエン)、ビタミンA、循環改善薬などの内服を行うことがありますが効果は証明されていません。
脳の障害
【 症状 】脳において色を判断する後頭葉の下部に、脳梗塞などの異常が生じることで色覚異常が引き起こされることがあります。具体的な状態としては、見るものがモノクロになります。
また、脳卒中、脳腫瘍などの疾患では、大脳の色覚情報処理機能が障害されるため、色覚異常が生じることがあります。
【 原因 】大脳が強く障害された場合などには、脳卒中で手足の片麻痺がでるのと同様に、同名半盲が出現します。
同名半盲とは脳梗塞や脳腫瘍などで脳が障害されると、視野の右側、あるいは左側が半分見えなくなるというものです。
よく勘違いされますが、右同名半盲は「右目が見えなくなる」のではなく、「右目でも左目でも」「右側」が見えなくなります。左同名半盲は「左目が見えなくなる」のではなく、「右目でも左目でも」「左側」が見えなくなります。
【 治療方法 】損傷した脳機能が再生することで治療が可能ですが、脳機能が復活するかについては定かではありません。
心因性視覚障害
【 症状 】視機能の異常としては視力低下のほかに視野異常などが生じることもあります。
発症は7歳~12歳の女児に多く、男児の約2倍と言われています。
【 原因 】心因性視覚障害とは、心理的な原因によって引き起こされる視機能の異常で、眼には疾患を認めませんが色覚異常が生じます。
【 治療方法 】心因性視力障害の治療法というものが、確立されているわけではありません。
眼科的な検査で、屈折異常も、眼球の器質的異常も見当たらない場合、なんらかの心理的な要因によって、視力が低下している可能性が考えられます。
ストレスの原因を見つけ、その原因を完全に除去するよう周囲の理解が大切です。
簡単には解決できないことも多く、長期的に経過をみることも必要です。
加齢による水晶体の濁り
【 症状 】加齢は疾患ではありませんが、加齢に伴い水晶体(目のレンズ)は老化するだけでなく、紫外線により濁り始めます。
【 原因 】水晶体(目のレンズ)は老化するだけでなく、紫外線により濁り始めます。透明から黄色に着色された水晶体は、短波長の光の透過率を減少させます。
そのため、目から見える世界が段々と黄色~褐色、茶色がかって見えてくるようになります。
【 治療方法 】加齢による水晶体の濁りは白内障治療と同様の措置で治療となります。
03日常生活で起きる、
色のかすみや視界のぼやけが
生じる原因とケアの方法
疲れ目
【 原因 】目の酷使によってかすみ・痛み・まぶしさなどが現れる「疲れ目」が原因になっているケースです。
「疲れ目」の状態だと、レンズの役割を持つ目の水晶体の厚みを調整する毛様体筋が緊張したままとなることで、ピント調節がしづらくなり、色のかすみや見えづらさが生じてしまいます。
疲れ目を放置し、目の症状に加えて頭痛・肩こり・吐き気といった全身症状を伴う「眼精疲労」へと移行した場合には、休んだだけではなかなか治りません。
【 ケア方法 】目と身体をしっかりと休ませるための十分な休息をとることで軽快します。
目の乾き
【 原因 】空気の乾燥、エアコンの風などによって目が乾くと、一時的に視界がぼやけたり、かすんだりすることで見えづらさが生じる恐れがあります。原因を取り除けば、改善します。
涙の分泌量の低下・質の変化によって慢性的に目の乾きなどを感じる「ドライアイ」の場合は、治療が必要です。
【 ケア方法 】乾燥を防止するための加湿機の使用や、直接顔にエアコンの風が当たらないように風防を用いるなどの対策が有効です。
コンタクトレンズの影響
【 原因 】コンタクトレンズのケアを怠るなどして、レンズが汚れた状態で使用していると、視野がかすんで見えることがあります。
正しく使用していても、結膜炎など目の病気があるとレンズが汚れやすいため、目がかすむように感じることがあります。
【 ケア方法 】コンタクトレンズが汚れているのに気づかず使用していると、炎症を起こしてかすみ目などの症状が現れてくることもありますので、コンタクトレンズは常に清潔に扱ってください。
コンタクトレンズのつけっぱなしなどによって、一時的に視界がぼやけたり、かすんだりすることがあります。装用自体が非装用の場合と比べて目が乾燥しやすい状態を招いてしまうため、正しく使っても症状が出る場合には眼鏡への変更を検討します。
寝不足と不摂生
【 原因 】寝不足の状態や不摂生が続くことで疲労が蓄積し、視界のぼやけや色のかすみが生じます。
【 ケア方法 】しっかりと睡眠を取って目を休ませましょう。ストレスに強い体を作るためにも睡眠はとても重要です。個人差はありますが、必要な睡眠時間は1日6~8時間程度と言われています。睡眠不足の状態だと近視視力が著しく低下し、文字のかすみや読みづらさが生じます。
就寝前には、ぬるめのお湯にゆっくりつかるなど、リラックスできる工夫をすると良いでしょう。寝る前3~4時間はカフェイン摂取を避けるなどして、睡眠の質を下げないことも大切です。
加えて睡眠だけでなく食事も大切です。バランスの取れた食事を心がけましょう。
04色が分かりにくいときは眼科に相談を
重大な疾患に早急に気づけるよう検査を受けましょう
以前とは異なり、色がかすんで見えたり、見えづらかったりするなどの違和感を感じる場合は、何かしらの病気が潜んでいるかもしれません。
さまざまな原因が考えられますので、不安を感じる方は眼科で相談しましょう。
色の見え方が他の人とは違うかもしれないと思ったら
色覚異常について詳しく相談したい場合にはお近くの眼科を受診し、色覚検査を行っているか相談してみるのも良いでしょう。
後天色覚異常の場合にも、見え方に変化が生じた際には、同様に眼科を受診しましょう。