#CASE 13ドライアイ

01目が乾く、それってドライアイ?

ドライアイとは

ドライアイは眼を守る役割がある涙の量が少なくなったり、涙の質が変化したりして、涙が均等に行き渡らなくなる病気です。状況によっては目の表面に傷を伴うことがあります。ドライアイは涙の病気ともいわれ、涙が不安定になることで起こります。涙は眼の表面をおおい、眼を守るバリアのような働きをしています。主に5つの役割を持っており、乾燥防止、洗浄、殺菌、栄養補給、目が鮮明な像を結べるよう黒目の表面を滑らかに保っています。
現代社会において、さまざまな要因が絡み、ドライアイの患者さんは約2,200万人とも言われており、5人に1人の割合になっています。

ドライアイの特徴

涙は99%の水(液層)と1%の脂から成立しています。この1%の脂が、液層の表面に薄い油層として存在することで、水分が蒸発しないようになっています。この油を分泌しているのがまぶたのなかにあるマイボーム腺です。マイボーム腺の出口が細菌の感染などでつまると涙の成分のバランスが崩れて、眼が乾きやすくなったり、涙目になったり、炎症になったりします。これをマイボーム腺機能不全といいます。
最近の研究で、脂が足りないタイプのドライアイが全体の85%以上であることがわかりました。これは脂が減ることで、乾燥しがちになるということです。脂が足りないタイプのドライアイは点眼治療では改善しない場合が多くなります。
水分が減少するタイプのドライアイも存在しています。

02ドライアイの主な症状は?

ドライアイの初期症状は?

目の渇き

涙の分泌量が不足したり、涙の成分バランスが崩れたりすることで目が乾燥します。一時的な目の乾きとは異なるため、重症化することがあります。重症化すると、視力低下、眼の痛み、感染症リスクが高まります。また、重症化とともに、他の疾患が現れることがあります。

目やにが増える

目やにが増える要因として、涙の量が少なくなり、洗い流す力・まばたきの力が弱くなるため、目やにが溜まりやすくなります。透明や白色の目やにが出るときはドライアイが疑われます。ドライアイによる目やにの異常に対するケアには、目の潤いを保つ効果や乾燥防止作用を含むムチン、ヒアルロン酸製剤を配合している点眼薬を使用します。

ドライアイが重症化すると?

目だけの影響ではなく体へも影響を与える

視力低下、痛み、感染症のリスクや、失明する可能性があります。ドライアイと甘くみず、一度医師の診断を受けることをおすすめします。ドライアイほど、眼科医と一般の方の乖離が大きい病気はないかもしれません。以下は重症化した場合の考えられる症例です。

・角膜潰瘍:角膜に傷ができ、視力低下や痛みを伴います。
・結膜炎:結膜に炎症が起こり、充血や痒みがひどくなります。
・眼瞼炎:まぶたに炎症が起こり、腫れや痛みを伴います。
・眼瞼内翻:まぶたが内側に巻いてしまい、まつ毛が角膜を傷つけます。
・視力低下:角膜の傷や、涙の不足による視力低下が起きる可能性があります。
・眼の痛み:重度の乾燥による痛みや、角膜潰瘍などの合併症による痛みを感じることがあります。
・光過敏症:光がまぶしく感じやすくなります。
・ドライアイによる全身症状:肩こり、頭痛、不眠など、全身に症状が広がることもあります。

03ドライアイの主な原因は?

エアコン

低湿度や低温は涙の蒸発を促進させるためドライアイを悪化させます。今は夏も冬も両方でエアコンを使っており、乾燥しがちになります。またエアコンの風を直接浴びることも悪化する原因となります。

コンタクトレンズ

コンタクトレンズの装用で涙が不安定な状態となり、ドライアイが悪化する原因となります。コンタクトレンズにより涙の膜をレンズの表面と裏側の2つの層に分けることになり、本来の油分の膜よりも薄くさせてしまい、涙が蒸発しやすくなります。また、無意識にまばたきの回数が減ることがあります。まばたきは涙を均等に広げる働きをしているため、回数が減ると角膜が乾燥しやすくなります。

パソコン

パソコンの使用もドライアイを悪化させます。オフィスで働く人にとって、使用しない日はないアイテムですが、毎日のパソコン作業も長時間の画面の注視を行うことでまばたきの頻度を減少させます。すでにドライアイの場合は症状を悪化させる原因となります。

スマートフォン

こちらもパソコンと同様に今ではなくてはならないスマートフォンですが、パソコンよりも近距離で画面を凝視することになります。凝視すると、まばたきの回数の減少に繋がるため、涙の蒸発量が増え、目が乾燥することになります。長時間使用することでドライアイを悪化させる原因となります。

加齢

年齢を重ねると涙の分泌量と涙の質が変わります。目が乾燥しがちとなることでドライアイを悪化させる原因となります。

04自分で出来る
簡単ドライアイチェックシート

さまざまな症状がありますが、チェックシートを見てみましょう。当てはまる数が多いほど、ドライアイの可能性が高くなります。
別の方法として、10秒チェックという方法もあります。10秒間まばたきせずに目を開けていられますか?もし10秒間あけた状態を維持できないとドライアイの可能性が高いと言われています。

目が疲れる

目に不快感がある

朝目が開けにくい

なんとなく見づらい

目がごろごろする

目がヒリヒリ痛い

目がくしゃくしゃする

時々がすんで見える

目が乾いた感じがする

目が赤い

白っぽい目やにが出る

最新少し視力が低下したようだ

05ドライアイの主な治療方法

治療法① 点眼薬

涙の補充のための点眼や涙の水分や粘液を増やす点眼を使い、涙の量と質を上げてドライアイを治療します。さまざまな種類の点眼がありますので、病態に合わせて使い分けたり併用します。具体的には以下のとおりです。

ムチン分泌促進剤

目の表面を覆うムチンという成分の分泌を促し、涙の安定性を高めます。ムチンはノリのような働きをする物質で、目の表面に涙を繋ぎとめておく働きを担っています。特徴はムチンの不足が原因のドライアイに効果的です。

人工涙液

涙と同じ濃度の塩分を含んだ目薬です。一時的に目の表面の涙の量は増加しますが、その効果は数分で消えてしまいます。そのため「目薬をした直後はよいが、すぐに乾いてしまう」という方もおられます。涙の量を補い、目の表面を潤すことで、乾燥感は軽減します。安全で刺激が少ないため、頻繁に使用することに向いています。

治療法② 涙点プラグ

点眼薬で効果が得られない人が行うのが、涙点プラグとキープティアです。涙は約10%が目の表面から蒸発して、約90%が上下の涙点から排出されます。
涙点プラグは涙の排水口である涙点に栓(涙点プラグ)をして、涙が流出しないようにする方法です。涙点とは、鼻側目がしらの上下にそれぞれ1個ずつある涙の排出口で、両目合わせて4個あります。涙の生産工場である涙腺から分泌された涙の多くは、この涙点から排泄されます。
この涙点に栓(プラグ)を差し込んで目に涙を溜め、ドライアイを治療するのが「涙点プラグ挿入」という方法です。 使用されるプラグは涙点の大きさや位置などに合わせて、各種サイズが用意されており、症状に応じて下涙点・上涙点のいずれかに装着する、あるいはその両方に装着するなどの方法が選択されます。

治療法③ キープティア

涙点プラグと同じで涙点を塞ぐ医療機器です。涙点プラグとの違いは、素材は牛の真皮から抽出したコラーゲンで、涙点に注入すると、体温でゲル化し、涙点の出口をふさぎます。コラーゲンのため、自然吸収され、異物感が少なく、痛みをできるだけ避けたい方におすすめしています。効果は2〜3か月程度で、定期的な注入が必要になります。

06自分で出来る手軽な対処法

すぐに病院に行けないときは自身でできる対処法を実践してみましょう。

目薬の利用

一日の中でも目が乾きやすいタイミングというのが存在しており、朝起きたとき、夕方頃、夜寝る前が該当します。正しいさし方として、点眼後にすぐにパチパチとまばたきをしがちですが、まばたきをせず、目頭を軽く押さえ、目を閉じておくことが効果的です。
できれば病院で処方される点眼薬を利用しましょう。眼科医の診断にもとづき、症状に合わせた処方がされますので、最適となります。

まぶたを温める

あたたかいタオルで目を温めることで、マイボーム腺の働きを促し涙の蒸発を防ぎます。温めることで油が溶けて、目の表面を覆うことでドライアイ症状が改善します。できれば1日2回することが効果的といわれています。使い捨てになりますが、市販のアイマスクを活用することも有効です。

意識的にまばたきをする

まばたきを意識的に増やすことは有効です。日常生活では、スマホ、パソコン、テレビと画面を見る機会が多いため、まばたきの回数が減少傾向にあります。まばたきは涙の分泌を促すので、意識的に行っていきましょう。

目もと、まぶたを洗う

マイボーム腺機能不全に対して行います。まぶたの縁をきれいにすることで油の出をよくします。可能ならば、まぶた専用の洗浄液を使ってやさしく洗ってください。

07よくあるご質問

ドライアイは治りますか?

慢性の疾患です。そのため、残念ながら治療を続けても完治することがありません。そのため、維持をする治療が行われます。生活の質を落とさないようにすることが大切です。

サプリや飲み薬では治療できないのですか?

昔から言われていることですが、アントシアニンを含むベリー系のサプリメントは眼に効果があると言われています。また、最近発売された乳酸菌を含むサプリメントは、ドライアイを軽減させる効果が有るのではないかと注目されています。
また、シェーグレン症候群(膠原病・関節リウマチ)による口腔乾燥症に対する内服薬(処方薬)を服用すると、ドライアイが改善する場合があると言われています。

ドライアイに良い食べ物は何ですか?

バランスの良い食生活がドライアイの予防・改善に有効で、いわゆる特効薬的な食べ物はありません。栄養素でいうと、ビタミンAやビタミンB12、DHAやEPA、アントシアニン、ルテインなどの栄養素が不足している可能性があると言われています。
具体的には抗酸化作用のある食べ物、例えばほうれん草、ブロッコリー、青魚などはある程度有効ではないかと考えられています。

アイメイクはだめなのですか?

目の粘膜はデリケートなので、アイメイクするときは注意してください。特にマイボーム腺(まつ毛の生え際の内側にある小さな点)を誤ってふさがないようにしてください。アイシャドーやアイラインは、まつ毛の外側に描くようにしてください。

IPL光線療法とは何ですか?

近年注目されている治療法の1つです。マイボーム腺機能不全に効果が期待されています。強いパルス状の光を照射する治療法です。まぶたに照射することで、マイボーム腺の溜まった古い角質や炎症を改善し、スムーズな脂の分泌を促します。IPL治療はもともと美容医療で利用されています。そのため、安全性も確立されています。ただし自費診療で、複数回の治療が必要ですので、まずは医師にご相談ください。

08受診をした方が良いタイミング

さまざまなことを紹介してきましたが、受診の目安として、以下を目安にしてみてください。
・目薬をさしても改善しない:市販の目薬をさしても効果を感じなければ、受診してみましょう。
・日常生活に支障が出ている:パソコン作業中に集中できない、スマホの文字がかすむなど、日常生活に影響が出ている場合は一度受診しましょう。
・症状が悪化している:新たな症状が出てきたり、症状が強くなっている場合は受診しましょう。
・視力低下:視力低下を感じたら他の疾病の可能性もありますので、検査してみましょう。

ここからは当クリニックの紹介です。手術においては白内障手術、硝子体手術、まぶた手術、硝子体内注射、レーザー治療を行っています。また、結膜炎、白内障、緑内障、糖尿病の眼の合併症、麦粒腫・霰粒腫、網膜疾患などの治療をしています。
大学病院時代は、さまざまな症例の手術をしてきました。医院の開院後は地域に根ざした病院として、丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。眼科全般の一般的なことから手術まで幅広く対応できますので、地域の皆様のかかりつけ医としてぜひ当院にご相談ください。