#CASE 16ぶどう膜炎

01完治が難しい難病?ぶどう膜炎とは?

ぶどう膜炎とは

何らかの原因で、茶目の部分から奥に広がる「虹彩」、「毛様体」、「脈絡膜」のぶどう膜に炎症が起こる疾患で、小児から高齢者まであらゆる年齢層で生じます。
ぶどう膜は、他の眼組織と比べて血管が多いため炎症を起こしやすく、炎症が起こると、網膜をはじめ、ぶどう膜に隣り合わせている眼組織にも、炎症が少しずつ広がり、視力の低下を引き起こします。

ぶどう膜炎の特徴

さまざまな要因によって引き起こされるため、問診・眼科所見・全身所見を総合的に判断してぶどう膜炎の診断を行います。
ぶどう膜炎を併発する疾患として、ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病をご存知の方も多いかもしれません。いずれも過剰な免疫反応により自己の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患に分類される疾患で、原因はいまだにわかっていません。

ぶどう膜炎の症状

初期症状として、充血、眼の痛み、視力低下、飛蚊症、かすみがあるといわれていますが、正直なところ、一般的な眼の病気や疾患、不調とあまり変わらないため、判断がつきません。そのため、自己判断せず早めの眼科での診療が大切になります。

02ぶどう膜炎の原因は?

ぶどう膜炎の原因は多種多様で、大きく分けると免疫異常が主な原因となります。免疫異常については3で説明する併発する病の3症例が主なものです。その他にも感染性のぶどう膜炎もありますが、実は一番多いのは原因不明の場合です。いろいろな点から調べても原因がわからない場合が2〜3割あります。

03ぶどう膜炎を併発する病

ぶどう膜炎を併発する病① ベーチェット病(厚生労働省の特定疾患)

ベーチェット病の患者さんの多くが、ぶどう膜炎を併発することが多いため紹介します。
ベーチェット病によるぶどう膜炎の特徴は再発しやすく慢性化し、両目に症状が出ること、重症化しやすいことが挙げられます。
ベーチェット病の症状は再発性口内炎、皮疹、外陰部潰瘍、関節炎、消化器症状、神経症状など多彩な症状が現れます。突然、眼に炎症が出現することがあり、これは「発作」と呼ばれています。発作の程度は様々ですが、網膜の強い炎症を繰り返した場合、ダメージが積み重なって、視力が極端に低下することもあります。
ベーチェット病は自己免疫疾患であり、自分の身体を攻撃してしまう病気です。この異常がぶどう膜にも影響を与え、炎症を起こしていることが考えられます。
ベーチェット病を完全に治す治療方法はありません。発作をできるだけ予防し、発作がおきても炎症の程度を軽くすることが治療の目標になります。そのため、ステロイドの局所投与や免疫抑制剤、生物学的製剤を組み合わせて行います。薬剤は治療効果が高い反面、重い副作用を引き起こすこともあります。

ぶどう膜炎を併発する病② サルコイドーシス(厚生労働省の特定疾患)

サルコイドーシスの患者さんの多くが、ぶどう膜炎を併発することが多いため紹介します。
サルコイドーシスによるぶどう膜炎の特徴として、再発しやすく慢性化し、両目に症状が出てしまい、他の臓器にも症状が出る場合があります。
サルコイドーシスは、原因不明の多臓器疾患で、多彩な臓器に小さな腫れ物ができる病気です。ぶどう膜にも小さな腫れ物ができてしまい、炎症が起こりやすくなります。
20代と50代以降に発症のピークがあります。眼にはぶどう膜炎が現れ、日本人では60〜70%の頻度で出現すると言われています。サルコイドーシスの患者様の1 〜2 割は治療しても治らないため、ぶどう膜炎も完治させるのが難しくなります。
ぶどう膜炎に対する主な治療法はステロイド薬の点眼です。眼底病変が強い場合や多臓器病変を含めた重症度によりステロイド薬の内服を行います。

ぶどう膜炎を併発する病③ フォークト・小柳・原田病(以下、原田病)

原田病は、ぶどう膜炎の一種で、メラニン色素を作る細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患です。眼の症状はぶどう膜炎の症状が現れますが、合わせて頭痛や嘔吐が強く出ます。原田病の特徴は皮膚、毛髪の白化、耳鳴りや難聴などの耳の症状があります。これは各組織の色素細胞が自己免疫の作用で破壊されるために起こると考えられています。
原田病の治療はステロイド薬の投与が有効です。初期段階で、充分な量のステロイド薬を点滴投与することで、再発を防げるとされます。副作用の出現することがあるため、注意が必要です。

04ぶどう膜炎の具体的な治療方法

ぶどう膜炎の治療法は原因、炎症の程度、部位などによって異なりますが、一般的な治療方法は薬物療法であり、治療の効果がない場合は手術療法が行われます。

治療方法

薬物療法

・ステロイド剤炎症を抑える最も一般的な治療薬で、点眼薬、注射薬、内服薬などさまざまな形態で使用されます。

・免疫抑制剤細胞の分裂や増殖を阻害し、体の免疫反応を薬剤で抑えます。

・抗ウイルス薬ウイルスが原因の場合にそのウイルスにあった薬剤が使用されます。

手術療法

・硝子体手術眼球内の硝子体が濁ったり、出血する場合に実施します。

治療期間ってどれくらい?

症状や状態に応じて大きく異なります。状況により数週間から数年単位になります。治療の注意点があり、以下が治療のポイントです。
・医師の指示を守ること、発作や再発をできるだけ防ぐように心がける
・発作や再発が起こったら炎症を抑えて、状態を維持するようにしていく
・白内障や緑内障などの合併症に気をつける
・定期検査を必ず受け、日々の生活をしっかりと過ごす

ぶどう膜炎って完治するの?治らないの?

個々の状態により大きく異なります。原因がはっきりと特定できている場合は完治の可能性があります。また、軽度の炎症の場合も完治することがあります。
一方で完全な完治は難しい症例も多くあります。原因不明の場合は慢性的に繰り返すことが多いです。また、自己免疫疾患の場合も根本的な治療が難しいため、再発を繰り返す可能性があります。また、合併症等があり、進行して重症な場合も完治が難しい場合があります。そのため、状況によっては完治を目指すのではなく、適切な治療を継続的に行い、視力低下を抑え、快適な生活を送れるようにしていきます。

05ぶどう膜炎に関するよくあるご質問

ぶどう膜炎と診断されました。再発が多いと知り、これからの生活や視力の低下が不安です。
仕事や趣味を続けていけますか?

ぜひできるだけ無理のない範囲で続けてください。ぶどう膜炎は再発しやすいため、長期で病気と向き合い、治療を続けていく必要性があります。治療の世界も日々進化しており、生物学的製剤が登場するなどしています。まずは適切な治療を続けて、眼の炎症を抑え、視力障害に繋がる白内障や緑内障などのリスクを減らせば、深刻な病状にならないこともあります。そのためにも、症状がいいからといって通院を止めることがないようにしてください。定期的な通院と医師の診療が再発防止に一番効果的です。

ぶどう膜炎の原因が分からないまま、治療を続けています。よくあることなのでしょうか?

実際に患者さんの20〜30%の方が原因不明で「特発性ぶどう膜炎」と呼ばれています。
眼や全身のいろいろな検査を行っても、原因が分からないことがよくあります。しかし、通院を続ける中で、経過を観察していくと原因がわかることがあり、病気が判明すればより適切な治療をおこなっていくことが可能となります。全身の病気が原因の場合もあるので、眼科だからと眼以外でも気になる症状等があれば、医師に伝えるようにしましょう。

虹彩炎はぶどう膜炎と関係ありますか?

ぶどう膜炎のひとつです。虹彩炎はぶどう膜炎の一種であり、炎症部位を表しています。虹彩のみに炎症が起こっていると虹彩炎になり、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜のいずれか、またはすべて)に炎症が起こっているとぶどう膜炎になります。つまりぶどう膜炎の方がより広い概念ということです。基本的に同じ症状となりますので、同じ病気です。

最新の生物学的製剤とは何ですか?

人間の遺伝子や生物由来の物質を利用して作られた、高度な医療技術で作られた薬剤です。化学合成薬とは大きく異なり、体の免疫システムに直接働きかけ、特定の病気の原因となる免疫反応を調節したり、物質の働きを阻害したりすることで、病気の症状を改善する薬剤です。点滴注射と皮下注射(自己注射)があります。ぶどう膜炎の原因となる病気により使用する薬剤が異なりますので、医師に相談してみてください。今まで効果がなかったぶどう膜炎にも効果が期待できる反面、免疫力が低下し感染症のリスクがあがるデメリットもあります。新たな選択肢として、医師とよく相談して方針を決めてください。

06早期発見と早期治療が重要

ぶどう膜炎は原因も症状も様々で治療方法も複雑な病気です。初期症状も他の眼の疾患と大きく変わりません。もし少しでも違和感を感じたら眼科を受診するようにしてください。
また、定期的な検査と診療がさまざまな病気の早期発見に繋がります。
大阪市立大学時代には、さまざまな症例の手術をしてきました。医院の開院後は地域に根ざした病院として、丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。地域の皆様のかかりつけ医として眼のことなら、ぜひ当院にご相談ください。