「視力が落ちた」「ものが見えにくくなった」と感じることが増えていませんか?
視力は加齢、生活環境や労働環境、病気の影響など、様々な要因で落ちる可能性があります。
特に急激な視力の低下は何かしらの目の疾患に起因するものである可能性が高く、重大な疾患であれば速やかに治療が必要になります。
視力の低下が何によるものなのかを把握し、治療や生活習慣の改善を通して、長く健康な目を維持しましょう。
#CASE 17視力低下
(近視、遠視、乱視)
01視力が低下したと感じていませんか?
02視力低下の主な原因は?
加齢によるもの
視力低下の要因で代表的なひとつが老眼です。
老眼は、中高年に起こるようなイメージを持っていますが、実は30~40代でも老眼の症状が起き始めると言われています。
老眼とは、眼鏡やコンタクトレンズを使用して遠くを見た際に、手元が見えにくくなる状態を指します。老眼は加齢に伴い誰もがなるもので、30代くらいから徐々に症状が出始め、40代半ばになると老眼が進行していきます。
目の使いすぎによるもの
目を酷使することによる「疲れ目」も視力低下の原因です。疲れ目は、目を使いすぎたことで目に充血や痛みなどが生じます。疲れ目になると、視界がかすんだり、ぼやけて見えたり、まぶしく感じたりするなどの症状が起き、視力の低下を自覚することがあります。
疲れ目による視力の低下は一時的なものですが、悪化すると目の症状以外にも肩こりや頭痛などの症状が起きたり、酷くなるとめまいや吐き気を引き起こしたりすることもあるのです。
通常は十分な休息で回復しますが、休息をとっても症状が繰り返される場合は、眼精疲労と区別されます。
その他
視力の低下は職業や生活環境によっても起こる可能性があります。
デスクワークで長時間パソコンを見るなど、仕事で目を酷使していると、目の構造自体が変化してしまうこともあります。
また、長時間目を酷使するとドライアイや疲れ目などの原因にもつながります。
そのほかにも、暗い場所での作業で目に負担をかけることや、工事現場や作業場などの粉塵が発生する場で、目を傷つけてしまうなども視力低下を招く原因です。
03視力が低下するのは
ピントのぼけ(屈折異常)が原因?
目の仕組み
人がものを見るには、まず外にある光を感じとる必要があります。
目の中の機能でこの働きを担っているのが網膜です。網膜は目の奥側にあり、この部分にまで光が到達することで、私たちは外に光があることを認識することができます。
しかし、光を感じるだけでは「ものが見える」という状態にはなりません。ものが見えるためには、見ているものに対して「ピント」が合っていなければなりません。
つまり、外から入ってきた光がうまく眼の中で屈折(曲がること)して網膜上に一つの焦点を作る、つまりピントが合った状態になっている必要があります。
視力が低下してしまうのは、前述した病気や加齢によって目の機能が損傷し、ピントが合わなくなってしまうためです。
視力低下とはピントがぼけてしまうこと(屈折異常)
目の構造には個人差があり、眼の中でうまく光が屈折しないことで、網膜上に一つの焦点が形成されない眼もあります。
このように、網膜上に一つの焦点が形成されない状態を、「屈折異常」と言います。
屈折異常がある場合、見ようとしているものに対してピントが合わないため、ものがはっきりと見えなかったり、ぼやけて見えたりします。
04ピントのぼけ(屈折異常)には
「近視」「遠視」「乱視」の
3種類がある
ピントがぼけてしまう屈折異常には大きく大別すると3種類あります。
人によっては眼球の長さが長いために、網膜よりも手前でピントが合ってしまうことがあり、この状態がいわゆる「近視」の状態で、遠くのものがぼやけて見えにくくなります。
反対に、目にあまり奥行きがない人の場合、網膜よりも後ろで像が結ばれてしまいます。この状態がいわゆる「遠視」です。
また、眼の中で焦点が一つにならない状態になってしまうのを「乱視」といいます。
05「近視」になる原因と治療法
近視になる原因
近視には、遺伝と環境の両方が関与します。
遺伝要因とは、先祖や両親から受け継いだ遺伝子によって生じるというものです。
環境要因としては、屋外活動の減少や、近いところを見る作業の増加などが挙げられます。
実際は、どちらの要因によって生じるかという厳密な判定は不可能で、人によって異なる割合で、両者がともに深く関係して近視になります。
近視の治療方法
基本的には、レーシックなどの屈折矯正手術を行わない限り、近視は治りません。
ただ近年は、近視進行抑制治療が発達してきており、特にお子様の場合には成人よりも高い近視抑制効果が期待できるようになっています。
また、眼鏡やコンタクトの装用によって矯正することも可能です。
06「遠視」になる原因と治療法
遠視になる原因
遠視になる原因としては眼球が小さいことや、角膜・水晶体の屈折力が弱いといった場合に、網膜より後方で像が結ばれることで遠視になります。
通常、赤ちゃんの段階ではほとんどが遠視がちです。これは、眼球の前後方向の長さ(眼軸長)が短いためです。
多くの人は年齢を重ねるにつれて解消されていきますが、眼球がうまく発達しないと、角膜・水晶体の屈折の問題が残ってしまい遠視となります。
遠視の治療方法
大人の遠視の場合は、眼鏡だけでなくコンタクトレンズも選択肢に入ってきます。目の状態やライフスタイルに合った選び方をするのが良いでしょう。
子供の遠視の場合はピントが合いにくい状態が続くと、視力の成長がさらに妨げられます。視力の成長は8歳くらいには止まりますので、それまでに遠視を発見し、眼鏡による矯正で「近くにもピントが合いやすい」状態をつくってあげることが大切です。
07「乱視」になる原因と治療法
乱視になる原因
角膜や水晶体の歪みによって異常な屈折力が生じることが原因とされています。なぜこのような歪みが起こるのかについては、はっきりしたことが分かっていません。
ただ、眼球が成長する過程で眼球が不均一に成長したり、眼圧が不均一であったりすることなどが影響していると考えられています。
乱視の治療法
近視や遠視と同様に、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が可能です。強度の乱視の場合は、ハードコンタクトレンズが合うことが多くなります。
また、近視に対して行われることのある屈折矯正手術によって、角膜を削ったりレンズを挿入したりして、網膜にピントが合うよう矯正することで視力を高めることができます。
08ピントのぼけ(屈折異常)以外に
急激な視力の低下を招く病気が
あるので要注意
白内障
白内障は、目のレンズの役割を果たしている水晶体が白く濁ることで、目が見えにくくなる病気です。
加齢とともに発症するため、高齢者に多く、60歳代で70%、70歳代で90%、80歳以上になると100%の割合で起こります。
白内障の主な症状は以下の通りです。
・視界がぼやける、かすむ
・まぶしく感じる
・暗い場所で見えにくく感じる
・ものが二重に見える
・視力低下
白内障の原因の多くは、加齢によるものです。その他の原因としては、糖尿病やアトピー性皮膚炎、炎症、目の外傷、ステロイドの使用などがあげられ、年齢に関係なく起こります。妊娠初期の風疹の感染も、出生児の先天性白内障の原因です。
網膜剥離
網膜剥離とは、目の奥の眼底にある膜(組織)が剥がれて視力が低下する病気です。網膜は、目の中に入ってきた光を電気信号に変換し、視神経を通して脳に映像として伝達する働きがあります。いわゆる、カメラのフィルムの役割です。
この網膜が剥がれてしまうと、視野の一部が欠けて見えたり、急激に視力が低下してしまったり、失明してしまうことも場合によってはあります。網膜が剥がれるときに痛みを伴わないため気付きにくいということもありますが、前兆として、蚊が目の前を飛んでいるように感じる飛蚊症が現れることもあります。
近視が強い人は網膜剥離を起こしやすい傾向にあり、20歳代と50歳代以降に多いことが分かっています。
黄斑前膜
黄斑前膜とは、目の底の部分の網膜の真ん中にある「黄斑」と呼ばれる部分に膜が張り付いてしまう病気で、網膜の裏側から新しい弱い血管が生えて起きる「加齢黄斑変性」とは別の病気です。
ものが歪んで見えたり、大きく見えたりするなどの自覚症状があります。中高年に多く生じ、ゆっくりと進行する比較的良性の病気で、もう片方の目に視力の異常がなければ気づかない人もなかにはいます。
高齢者の大半が発症するとされる前述の白内障はとても有名な病気ですが、黄斑前膜も網膜の病気の中では多い病気のひとつです。40歳以上の約20人に1人の確率で発症し、特に50~70歳代の女性が黄斑全膜にかかるかことが多い傾向にあります。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎は、目の中の虹彩・様毛体・脈絡膜で構成される「ぶどう膜」に炎症が起きる病気です。ぶどう膜は特に血管の多い組織であり、脈絡膜に近い網膜や、目の外側の壁となっている強膜に起こる炎症もぶどう膜炎に含みます。
ぶどう膜炎は目がかすむ、まぶしく感じるなどの症状のほかに、目が赤くなる、目が痛い、ものが歪んで見える、視力が低下する、飛蚊症になるなどの症状が見られます。
原因は細菌・ウイルス・寄生虫による感染、免疫異常がありますが、30~40%は原因が分かっていません。免疫異常には原田病、関節炎合併症、サルコイドーシス、ベーチェット病などがあります。
緑内障
緑内障は40代で発症することが多い疾患で、症状はゆっくりと進行するため自覚症状がなく、かなり病状が進行してしまってから気づく人も多くいます。症状が進行すると失明する危険性もあり、日本人における中途失明の原因第1位の病気です。
主な症状はゆるやかに進行する視野狭窄や視野欠損となりますが、閉塞隅角緑内障では頭痛・吐き気・ 眼の痛み・充血といった激しい症状を伴います。
緑内障の治療法は薬物治療、レーザー治療、手術療法の3種類があります。多くの緑内障の治療は点眼や内服による薬物治療になります。複数の点眼薬を使用することもあります。点眼での治療効果が期待した以上に得られない場合はレーザー治療が行われます。薬物療法やレーザー治療を行っても症状が進行する場合は手術が行われます。術式は複数あるため症状に合わせて慎重に選択してください。
09早めの検査が視力低下を抑制できます
早期発見のための定期検査を実施中
なんらかの疾患によって視力が低下する場合は、早めに疾患の原因を知り対策を行う必要があります。
特に重大な疾患であった場合は視力を維持するためにもいち早く治療にあたっていただくのが望ましいと考えます。
定期検査で目の状態を把握しましょう
早期発見、早期治療には定期的な検査を受けていただくのが最適です。視力の状態を把握し、長く健康な目を維持するためにも是非定期的な検診をご利用ください。