手術に関して

涙が止まらない「流涙症」とは?手術と治療法を眼科医が解説

はじめに

「風が吹くだけで涙が出る」「光を見ただけで涙が止まらない」——こうした症状やまぶたへの刺激にお悩みではありませんか? 流涙症(涙目)は、結膜のたるみや涙の通り道の異常によって引き起こされることが多く、加齢やストレス、自律神経の乱れが背景にある場合も少なくありません。原因を正確に突き止め、適切な治療を行えば、多くのケースで症状は改善します。

 

1.流涙症(りゅうるいしょう)とは?

流涙症とは、涙が過剰に分泌されたり、涙の排出がうまくいかず、常に目が潤んでいる状態を指します。原因としては、結膜のたるみ(結膜弛緩症)や涙道の狭窄・閉塞などが挙げられます。

出典元:日本眼科医会

2.流涙の原因と代表的な疾患

主な原因として、結膜弛緩症、涙道狭窄・閉塞があります

●結膜弛緩症とは

「結膜弛緩症」とは、その名のとおり、結膜が弛緩した状態をいいます。

「結膜」は、眼表面のうち、白目の一番表面にある部分のことで、眼球壁を覆っている半透明の膜を指し、適度な緩みがあることで、上下左右などの眼球運動がしやすいようになっています。

このゆるみが強くなった状態が結膜弛緩症で、ゆるむことで涙の流れをせきとめてしまう状態です。

 

●涙道狭窄・閉塞とは

涙道は涙の通り道で、上下の目頭にある小さな孔(涙点)から始まり、眼表面の涙はこの上下涙点から上下涙小管を通り、涙嚢と呼ばれる涙の溜まる袋に向かい、その後鼻涙管を通って鼻の中へ排出されます。

涙道のどこかが狭くなった状態を涙道狭窄、閉じてしまった状態を涙道閉塞といいます。

目から鼻への涙の流れが悪くなったり、流れなくなることで、目がうるんだり、涙がこぼれるなどの流涙という症状が生じます。

3.検査の流れ

検査は細隙灯顕微鏡検査→涙管通水検査→涙道内視鏡検査の順番で行います。

涙が過剰に出ているのか、流れが悪いのかを確認していきます。

 

●細隙灯顕微鏡検査

目の表面や涙の状態を詳しく観察します。

 

●涙管通水検査

涙道に生理食塩水を流し、通過性を確認します。

 

●涙道内視鏡検査

細い内視鏡を用いて、涙道の内部を直接観察します。

 

4.流涙の手術方法

結膜弛緩症手術

加齢などでたるんだ白目(結膜)を切除・縫合し、涙の流れを妨げないよう整えます。

涙がスムーズに排出されるようになり、あふれにくくなります。

局所麻酔で行う日帰り手術が一般的です。

 

涙管チューブ挿入術

細い内視鏡を涙道に挿入し、狭くなった部分を確認しながら広げます。

必要に応じてシリコンチューブを留置し、涙道の通り道を確保します。

 

鼻涙管再建術(DCR手術)

完全に閉塞した涙道に対して、鼻腔との間に新たな通路を作る手術です。

骨を削る為、全身麻酔が出来る施設にご紹介させて頂きます。

 

5.流涙の手術の流れ:検査〜手術まで

当院では日帰り手術を実施しています。大まかな流れは次のとおりです。

1.術前検査・診察

目の状態を詳しく確認し、手術の適応を判断します。

 

2.手術当日

局所麻酔を行い、手術を実施します。

 

3.手術翌日

受診し、経過を確認します。

 

6.流涙の手術の術後の経過と注意点

術式ごとの注意点

●結膜弛緩症手術

術後1週間ほどは軽い異物感・充血があります。

傷口を触らないよう注意し、処方された点眼薬を指示通り使用してください。

 

●涙管チューブ挿入術

シリコンチューブを挿入した場合、数週間〜数か月間留置します。

チューブを入れている違和感はないことが多く、洗顔も普段通りして頂けます。

チューブ抜去まで定期通院が必要です。

 

共通の術後の注意点

・術後は一時的に涙が増えたり、違和感が出ることがありますが、徐々に改善します。

・医師の指示に従い、抗菌薬・抗炎症薬の点眼を継続しましょう。

・目や鼻を強くこすらない/ぶつけないよう注意してください。

・術後しばらくは洗顔やメイク、運動、飲酒、入浴など制限があることもあるため、指示を確認してください。

・チューブを入れている期間中は、定期的な通院と異常時の早期受診が重要です。

 

7.流涙の手術の費用と保険適用について

手術費用の目安(片目)

手術内容 1割負担 2割負担 3割負担
結膜弛緩症手術 約2,260円 約4,520円 約6,770円
涙管チューブ挿入術(内視鏡) 約5,700円 約11,400円 約17,080円

※術式によって費用は変わります

※上記は健康保険適用時の目安です

 

高額療養費制度

医療機関、薬局の窓口で支払う医療費が月(1日〜末日まで)の上限額(自己負担額)を超えた場合に、超えた分は健康保険から補填される制度です。自己負担額については、年齢や所得によって異なります。

外来診療の場合

・69歳以下の方(現役並みの所得の70歳以上の方) 上限は様々です。

・それ以外の70歳以上の方 8,000~18,000円 また年間上限144,000円

※70歳以上で負担割合が1割・2割の方は限度額認定証の提示がなくても18,000円以上はかかりません。

 

詳細は厚生労働省のホームページにある「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をご参照下さい。

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8.まとめ

流涙症は、加齢や涙道の異常などが原因で起こることが多いですが、適切な診断と治療により、多くのケースで症状の改善が期待できます

当院では、患者様一人ひとりの症状に合わせた治療プランを提案し、安心して治療を受けていただけるよう全力でサポートいたします。

流涙症に関する疑問や不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。視力を守るための最適な治療を提供いたします。